- 魚種名(和名): マアナゴ
- 通称: アナゴ1)
- 地域名: ハカリメ, ハカリノメ, スジアナゴ, ホシアナゴ, ドグラ, ハモ, ホンアナゴ,ノレソレ 1), ドテダオシ 5)
- ブランド: 「黄金あなご」(対馬西沖)
- 分類: ウナギ目 アナゴ科 クロアナゴ属 6)
- 学名: Conger myriaster 6)
- 英名: Common Japanese Conger
- 分布: 北海道~九州南岸の太平洋沿岸,北海道~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸,瀬戸内海,喜界島(稀);渤海,黄海,東シナ海,朝鮮半島全沿岸,済州島,台湾 6).
- 生息域: 沿岸砂泥底. 多くは水深100m以浅 6).
- 大きさ: 全長1m 6)
- 食べ方: 天ぷら, 煮つけ, 蒲焼, 白焼き1), 煮こごり. 生食は禁止(血液毒、粘液毒)1).ウナギに比べて淡白なおいしさが売りで, 関東では江戸前アナゴ, 関西では明石のアナゴがともにおいしいアナゴの代名詞となっており, 天ぷら, 焼きアナゴなどが人気 1).
高知ではアナゴの稚魚を「ノレソレ」(5~6 cm)と呼び, 三杯酢で食べる5). 対馬での旬は, 12~3月 9).
- 形態の特徴: 体表にはウロコがなくヌルがある. 側線の穴の部分が白く, 目盛のように並ぶことから関東ではハカリメ(秤目)と呼ぶ. 側線各孔, 背鰭, 頭部に白色点がある 1). 葉形幼生は春季に太平洋岸各地の地曳網等で, イワシ類のシラスといっしょに混獲される 7).
- 生活史: 夜行性 7). 淡水の混じる内湾・海藻の茂ったところや沿岸の砂泥にすむ. 尾びれから器用に砂に潜る性質がある 5). 餌は、稚魚(5~10 cm)は, コペポーダ, ヨコエビ, 多毛類など, 小~中型魚(15~50 cm)は, エビ類, ハゼ類, 大型魚(50 cm以上)はゲンコやテナガダコなど大型の動物 4).子供は, 体が薄く透明で柳の葉のような形で「レプトセファルス幼生(葉型幼生)(シラスアナゴ)」( 図1)と呼ばれ(通称ノレソレ)(主に全長90~130 mm), 冬~早春にかけて沿岸に群れをなして出現する. 幼生の出現は, 九州~関東太平洋側では, 主に11月~5月, 福島, 宮城では2~6月. 早い個体で, 孵化後約3ヶ月で沿岸域に来遊する. 孵化日は8~1月(ピークは10~12月). 幼生の餌は, 尾虫類のハウスなど 3).
マアナゴは日本沿岸から東アジア全体に広く分布しているが, 長年, 産卵場所は不明であったが, 2008年の調査によって, 同年9月に全長5.8 mm(孵化後3~4日後)の幼生が採集され(図2. 黒丸), 沖ノ鳥島南方の九州-パラオ海嶺上の海域がマアナゴ産卵場所の1つと特定された2).
- 漁獲量: 平成23年度漁業・養殖業生産統計によると, アナゴ類は全国で4374トンの漁獲量があり, 長崎県は 734トン, 次が島根県704トンで, 長崎県は日本一の漁獲量である(農林水産省HP: http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1212/03.html). 長崎県内において, 対馬周辺海域における漁獲量は多い. 小型のマアナゴを内湾や沿岸域で, 大型を沖合域で漁獲 8).
- 漁法: 釣り, 延縄, 底曳網, かご網5) 7)
- 漁期: 周年漁獲
- その他: 小型魚の保護対策やアカムツなどの他魚種の混獲防止に対して, 漁具選択性の利用などがある8) 10).
参考文献:
- 石川皓章著(2010)「海の魚大図鑑」(日東書院)
- 黒木洋明(2012)「江戸前の主役, 穴子も大回遊―沖ノ鳥島の南方にあったマアナゴの産卵場」科学 82(8): 891-894
- 望岡典隆(2001)「マアナゴの初期生態」月刊海洋33(8): 536-539
- 鍋島靖信(2001)「マアナゴの成長と食性」月刊海洋33(8):544-550
- 長崎県水産部HP「ゆめとびネット」(http://www.pref.nagasaki.jp/suisan/)
- 中坊徹次編(2013)「日本産魚類検索 全種の同定 第三版」(東海大学出版会)
- 岡村収・尼岡邦夫編・監修(1997)「日本の海水魚」(山と渓谷社)
- 東海正(2001)「マアナゴ漁業の漁獲特性と資源管理」月間海洋33(8):590-595
- 対馬市観光物産推進本部「対馬の特産品 総合パンフレット」
- 渡邊優祐・原田誠一郎・山下秀幸・東海正(2010)「沖合底曳網におけるアカムツとマアナゴに対するコッドエンド選択性に及ぼす角目網ウィンドーの効果」日本水産学会誌 76(5): 824-840